労働法の学習・勉強に

第7話 労基法の定める労働条件@―賃金

 

今回からは、労基法において労働条件の最低基準がどのように定められているのか、
項目ごとにみていきましょう。

 

まずは、「賃金」です。
今回は制度説明が中心となります。

 

目次
1.賃金とは
2.賃金支払いの5原則
3.休業手当
4.平均賃金
5.出来高払制の保障給
6.その他

 

1.賃金とは

 

賃金とは何か。労基法11条に定義規定があります。

 

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。(労基法11条)

 

どういう名称だろうと、労働の対償としての性格を持っていれば賃金ということですね。

 

ちなみに労基法上は、ボーナス(賞与)や退職金の支払義務について規定していません。
これらの支払いをするかどうかは労働契約によるということなのですが、
就業規則(別のところで解説します)などに規定があれば、当然支払義務が生じます。

 

 

 

2.賃金支払いの5原則

 

賃金は労働者の生活のためになくてはならないものです。
労基法は、賃金が確実に労働者へ支払われるように5つの原則を規定しています。

 

@通貨払の原則(労基法24条1項)
賃金は通貨で支払われなければなりません。
つまり、通貨の代わりに商品券や食料で支払ってはいけないということです。

 

ただ例外があって、銀行振込での支払いはOKです。(労基法施行規則7条の2)

 

A直接払の原則(労基法24条1項)
賃金は労働者に直接支払わなければなりません。
別の人に、「これ、彼の給料だから渡しておいて」なんてことはできないのです。

 

B全額払の原則(労基法24条1項)
たとえば、5分の遅刻があっても、計算上の理由だからといって30分ぶんにあたる賃金をカットすることは許されません。

 

法令に別段の定めがある場合や、労使協定がある場合は賃金の一部控除ができます。(労基法24条1項但書)

 

あなたが社会人ならば、たしかに税金や社会保険料は賃金から控除されていることがおわかりでしょう。

 

C毎月一回以上一定期日払の原則(労基法24条2項)
これもサラリーマンであれば、当然と思われるでしょう。
実はしっかりと法律で決められていたんですね。

 

ただし、ボーナス(賞与)などの例外も認められています。

 

D非常時払の原則
これは条文をそのままもってきましょう。

 

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。(労基法25条)

 

原則といってもたいしたことはありません。
一応知っておきましょう、というくらいのものです。

 

 

 

3.休業手当

 

労基法では休業手当という仕組みを定めています。

 

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。(労基法26条)

 

使用者側の理由で労働者が働けなかったときは、賃金の一部(平均賃金の60%)を支払わなければいけないとしているのです。

 

さらにややこしいのですが、民法にも似たような条文があります。

 

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。(民法536条1項本文)

 

ここでいう債権者とは、労務を受け取る者のことを指しており、使用者のことです。
債務者は労務を提供する者のことで、労働者のことです。

 

民法と労基法を比べると、一見民法の方が労働者にとって有利です。
賃金の全額が受け取れるのですから。

 

しかし「債権者の責めに帰すべき事由」とは、
余程の事情があったときでしか認められません。(正確にいえば、使用者の故意・過失が必要です。)

 

一方、「使用者の責に帰すべき事由」とは、
使用者側に起因する経営障害を含むとされています。

 

経営障害とは、資材が集まらなかったために作業が出来なかった場合や、機械の故障で工場が止まった場合など、使用者側のトラブルのことです。

 

経営障害は使用者側の故意・過失がなくとも起こってしまうものですが、こうした場合でも使用者は休業手当を支払わなければなりません。

 

なぜ、使用者の故意・過失(わざと・うっかり)がないのに休業手当を支払う必要があるのでしょう。(法律には一つ一つ理由があるのです。)

 

それは、休業手当が労働者の生活保障のために特別に設けられた制度だからです。

 

労働契約において、労働者の労働(労務の提供)がなければ、使用者は賃金を支払う必要がありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。(当たり前の話ですが。)

 

ですが、経営障害で労働者が労務の提供ができない場合は、休業手当が受け取れるのです。
市民法(民法)の原則を修正した社会法(労働法)ならではの考え方といえましょう。

 

 

 

4.平均賃金

 

休業手当の説明の時に突然「平均賃金」という言葉を使いました。平均賃金は、あらゆる制度上の賃金計算の基礎になります。

 

労基法は平均賃金の計算の仕方を定めています。(労基法12条)

 

原則は直前3か月の賃金総額(支給総額)を3か月間の総日数(暦日数)で割った額ですが、
直前3か月の賃金総額(支給総額)を3か月間の労働日数で割って0.6をかけた額のほうが大きければ、そちらが平均賃金です。

 

 

 

5. 出来高払制の保障給

 

労基法27条は、出来高払制を採る場合でも、労働時間に応じて一定額の保障をすることを求めています。タクシー運転手などの賃金体系を想定した規定です。

 

ただし、どれくらい保障をすればよいか定められていません。
行政解釈(厚生労働省の考え方)では、平均賃金の6割程度を保証することが妥当、としています。

 

 

 

6.その他

 

労基法以外で賃金に関して定めた法律が、最低賃金法、賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)です。

 

最低賃金法はご存知でしょうが、賃確法とは何でしょうか。

 

これは、会社が倒産した時に未払い賃金があった場合、その分を国が立て替えてくれる制度を定めたものです。

 

 

 

今回は、賃金について基本中の基本を押さえました。

 

賃金は最も重要な労働条件のひとつですので、
まだまだ細かい論点はたくさんあります。

 

ですが、ひとまず、労働法全体を見渡してから少しずつ掘り下げて勉強していきましょう。