労働法の学習・勉強に

有期契約労働者・短時間労働者

 

「非正規雇用」の回で、非正規労働者の労働法上の分類をお話ししました。

 

「有期契約労働者」、「短時間労働者」、「派遣労働者」でしたね。

 

今回はこのうち、前二つの雇用形態をもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

@短時間労働者

 

短時間労働者とは、通常の労働者(正社員)よりも所定労働時間が短い労働者のことです。

 

条文を確認しておきましょう。

 

この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。 (パートタイム労働法2条)

 

ちなみにパートタイム労働法とは通称でして、正式には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」といいます。

 

上の条文で注目してほしいのは、「通常の労働者」という言葉が使われていることです。
法律の条文に「通常の労働者」という言葉が使われたのは、この法律が初めてのことでした。

 

1996年の丸子警報器事件判決以降、「通常の労働者」と短時間労働者の処遇格差が問題になっていたのを背景に、いかにして両者の均衡を図るのかというのが同法の課題であり、目的となっています。

 

パートタイム労働法は均衡待遇を求める法律ですので、差異に合理性があればよいことになります。
ただし、次の条文だけは例外です。

 

事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。 (8条1項)

 

前項の期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。 (8条2項)

 

この条文は、@通常の労働者と職務内容が同一で、A通常の労働者と人材活用の仕組み・運用が同一で、B期間の定めのない労働契約を締結した「短時間労働者」については、通常の労働者と同じ待遇をしなければならないとするものです。

 

「均衡」待遇(異なるものは程よいバランスで)を基本とする法律の中に、「均等」(等しいものは等しく)を要求する条文が入っていることがポイントです。

 

要件が厳しいため、該当する「短時間労働者」がどれほどいるのかという問題がありますが、
差別的待遇を直接禁止する規定として重要な意義を持ちます。

 

A有期契約労働者

 

続いて有期契約労働者です。

 

有期契約労働者とは、期間の定めのある労働契約を結んで働いている労働者のことです。

 

わが国の労働法制は、有期労働契約を締結する段階では何ら規制を設けていません。(「入口規制がない」と表現されます。)

 

しかしいわゆる「正社員」(期間の定めのない労働契約を締結している労働者)に対しては「解雇権濫用法理」による保護の対象となるものの、
有期契約労働者に対してはせいぜい「雇止め法理」の規制にとどまるため、雇用が不安定であることが通常です。

 

そこで労基法は、有期労働契約の期間の長さに規制をかけています。

 

基本的に3年が限度ですが、専門的な知識を持つ労働者の一部や満60歳以上の労働者は5年まで認められています。(労基法14条1項)
これに対して下限の規制はありません。

 

それから有期労働契約の打ち切り、いわゆる「雇止め」に関しては、
「雇止め法理」の規制がかかる場合があります。(詳しくは、「雇止め」の回を参照。)

 

そして、有期契約労働者をめぐる法制度で重要なのは、
2012年の労働契約法改正で新設された18条と20条の規定です。

 

どんなルールが設けられたのか簡単に見ていきましょう。

 

労働契約法18条(無期契約転換ルール)

 

有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合には、有期契約労働者が申込みをすることで、期間の定めのない労働契約に転換するルールが定められています。

 

2013年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超えると、その契約期間の初日から末日までの間に無期労働契約への転換を申し込むことができます。
条件を満たしていれば使用者の意思にかかわりなく承諾したとみなされるのですから、
契約ルールとして非常に特異なものだといえます。(労働者の「申込み」が前提となっていることに注意してください。)

 

このルールが設けられた理由は、有期労働契約が濫用的に用いられるのを防ぎ、労働者の雇用の安定を図るためだとされています。

 

ちなみに、通算契約期間の計算にあたって一定の無契約期間がある場合は、通算契約期間の計算がリセットされます。(労契法18条2項、いわゆるクーリングですね。)

 

労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

 

こちらは条文を見てみましょう。

 

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。 (労契法20条)

 

この条文は、先ほど説明したパートタイム労働法8条の有期契約労働者ヴァージョンだと考えてください。

 

実態として多くの有期契約労働者は、いわゆる正社員の働き方とは違う枠組みで働いています。

 

しかしながら、正社員と同じ仕事、責任を担っている有期契約労働者も存在します。
「有期契約労働者」であるだけで賃金が低かったり、福利厚生が手薄であるといったことがあってはならない、と指摘されるようになりました。

 

そこでこの条文において初めて、
有期労働契約であることに基づく労働条件格差が明文上で禁止されることとなったのです。

 

条文が入ったから何なんだ、という疑問が生じるかもしれません。

 

もっともな疑問で、実際のところ、この条文が設けられたことで直ちに社会に効果が生じることはないでしょう。

 

しかし今後訴訟が生じる中で裁判においてこの規定が持ち出され、
裁判所の判断に影響を与えうるといった意味で重要な規定だと考えられます。

 

 

 

今回は有期契約労働者・短時間労働者に関する法制度で、これだけは知っておいた方がいいものだけピックアップしました。

 

珍しく制度解説に終始してしまいましたが、最後にひとつだけ。

 

非正規雇用に関する法制度はこれからますます変化することが予想されます。
日々の動きを敏感に感じ取れるようになる上でも、労働法の基礎を学習することは意味のあることなのです。